【Umiのいえつうしん創刊号】~いのちの寄り添い・いのちの気づき~ に寄稿した文です。
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《家族が紡ぐいのちの旅路》①
家族の旅路について語るなら、まずは私の家族のこと、基盤になっている想いから始めることにしました。
家族って何だろう?と、考え始めたのは、中学校にあがる時、シングルマザーの母が今の父親と再婚する時でした。結婚って不思議。それまで、知らない人だったのに、紙にサインをするだけで、“家族です”っていう事になる。幼い私には、母と祖母・祖父のいた岐阜の家で過ごすというそれ以上を望んでもいなかったし、母の結婚も自分が養子になるってことも、よく理解できない事実でした。
新しい父は、元々、結婚しなくてもいつか養子として誰かを育てたい、と思っている人でした。なので、私を“養女”として付き合う、というよりも、“あゆみ”個人、一人の人間として一緒に成長していきたい、と考えていました。一対一で話をするから、子ども扱いはしないし、どこまでも本気で率直にモノを言い、私が話し合いを逃げようとすると叱咤されました。
今、冷静に振り返ると、それまで、“娘”“孫”の役割をしていれば良かった私が、いきなり、“娘”の前に、一個人として扱われるようになった事は、誰かの真似ではなく、自分自身の言葉を表現していく原点のような出来事でした。
いつしか医者を志す様になった私に、“勉強しろよ”とは言わず、よく“人間学を学べよ、自分で色んな体験をして会得していけ”という父でした。なので、医者になり、各地を旅するように学ぶ中、医者としていかに生きるかというよりも、まずは一人の人間として、より自分の特性を生かしながら世間にどんな貢献をしていけるのか、を考えてきました。母の再婚は、その当時は“悪い夢”みたいな出来事でしたが、今の私があるのは、その経験を通して、父が現れ、その父が、一人の人間として生きることを教えてくれた事が基盤にあります。もちろん母も、葛藤しながら、我が道をゆく私を、いつも応援してくれていました。離れて暮らしていても、お互いに気にかけていて、お互いの道を応援している関係は居心地がよく、いつのまにか、ああ絆はここにある、と実感していきました。
答えを探していた訳ではないけれど、“家族って?”と悩んでいたあの頃の自分に、今ならば『大丈夫だよ。本当に家族って、“目に見えない絆・・・信頼感、愛”があるって事だと思うよ。血の繋がりも、社会的な契約も、本当に関係ないの。ほら、だって、その場所は温かいでしょ?形はかわっても、本当に大切なものは変わらないよ。』と、伝え抱きしめたい。
一つ一つの出来事は、良く悪く見えたりするけれど、一生という旅の中の一つの出来事。振り返った時、“ああ、あれがターニングポイント!そういう意味だったんだ!”なんて、謎ときみたいな日がやってくる。だから、私はこの旅で出会う一瞬一瞬を味わいながら、歩いていきたいと思っています。
2017/11月
〈連載〉(敬称略・順不同)
・青木将幸『おとうさんのしごと』
・須永晃仁『法界力 いちばん必要なものは希望』
・なかもとまさお『今を奏でる』
・篠秀夫『私はわたし』
・かめおかゆみこ『いつも のーてんき』
・早乙女智子『にじの根~性の外来から~』
・堀内勁『直観的な世界を大事にしなさいよ』
・棒田明子『ぼうちゃんの眼、芽、メッ』
・ガンダーリ松本『夫婦はフゥフゥか、うふふか』
・熊谷歩『家族が紡ぐいのちの旅路』
・石川麗子『訪問ナースの徒然なるままに』
・田中博『まちふく物語~どんぐりとしょうがいと雇用~』
・白井千晶『親になる・親である~養子縁組・里親』
・菊地栄『巡るいのち~誕生と死の寄り添い~』
・松木貴子マリア『愛・歌の処方箋』
・西岡妙子『手でつくる。』
・齋藤麻紀子『まきこの部屋』
・フォトエッセイ 江連麻紀『お産の風景』
・絵とエッセイ 村田のりみち
・木村正宏『縁起のよい言葉』(がんこ本舗)
・写真 『おんぶと抱っこの風景』
・表紙写真 菊川法子
〈リレーエッセイ〉
・おそうじ学校講師リレー『自由自在』
・不登校経験の親・子リレーエッセイ『どんとこい!不登校』
・ダウン症のある子の親リレー『いのちはバリアフリー』
・和のお手当て人のリレー『人の手の優しい力』
・助産師リレー『生まれる』
〈毎号単発投稿〉
・『私のライフワーク』
・『人生山あり谷あり絶壁あり』